母となった喜び

出産予定日まであと一カ月となり、出産の為に実家に身を寄せることになりました。

考えてみると実家に二か月もいることは上京以来のことで、ましてや一日中家にいることは初めての事でした。
夫のいない平穏な生活を送りながら無事に産まれることだけを考えていました。

出産予定日を翌日に控えた検診では、まだ出産の兆候は見られないとのことでしたが、その日の夜11時頃突然陣痛が始まったのです。

直ぐに病院へ向かい、陣痛室から分娩室へ移り、何時間もの陣痛に耐えた翌朝8時頃、無事に女の子が産まれました。

ちょうどその朝、その年の梅雨明け宣言が発表され、分娩室の窓から眩しいほどの朝陽が差し込んでいました。

分娩台の上で私の胸元に置かれた産まれたばかり我が子は、真っ赤な顔で片目だけが小さく開いていました。

長時間の格闘で疲れ果てていた私は直ぐに眠ってしまいました。

目覚めた後、夫に抱えられ改めて新生児室のガラス越しに我が子を見た時には、喜びの涙が溢れました。

結婚して初めて味わう幸せであり、母となった喜びと同時にこれから先この子のためならどんなことでも耐えてみせるという決意のようなものが漲ってきました。

一週間後、母子ともに順調に回復し退院することになりました。

退院する際「はい、今日からあなたが育てるのよ」とばかりに我が子を手渡され、何とも言えない不安な気持ちになったのを今でも覚えています。

再び実家のお世話になり、一カ月検診を済ませると、久しぶりの自宅へ帰り、親子三人での生活が始まりました。

ところがその翌日、早速トラブルが起きたのです。

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