「ご主人を逮捕しました」

夫が会社を無断欠勤した翌土曜日の朝、私は子供達に内緒で最寄の警察署に捜索願いを出すことになりました。
何を持って行ったら良いのか分からず、とりあえず夫の顔写真でもと思いながら書斎の引出しを探しました。
すると出るわ出るわ、酔った勢いに任せ女性の腰へ手をまわしたり、頬にチューしてる写真がごっそりと。
もはやそんなことはどうでもよく、あたりさわりのない写真ばかりを選んで警察署に行きました。
生活安全課の扉を開くと、何やら個室というか取調室のような部屋へ通された私。
失踪当日、何の悩んでいる様子もなく、女性関係は過去にあったものの借金で追われている様子もなく、いつものように出勤した事、性格も能天気で思いつめて失踪なんて考えられないことを必死に説明し、渡された用紙に様々な情報を記入しました。
担当者が部屋を出てしばらくすると、「すみません、ちょっとこちらへ」と取調室の外へ促されました。
「警視庁○○署からです」と言って事務机の上にある電話の受話器を差し出され、ドキドキしながら耳に充てました。
「お電話かわりました、○○です」
「○○さんの奥さんですか?こちら警視庁○○署の生活安全課の○○です。昨日、ご主人を逮捕しました。」
「逮捕・・・ですか?」
「はい。罪状につきましてはご主人が自分で話すとの事なので、今はお話出来ません。検察庁に護送され不起訴となれば明日午後にでも釈放となります。」
目の前が真っ白になりました。
”通勤途中の警察署って、もしかして痴漢?いや~、まさか・・・”
そんなモヤモヤした気持ちでどこをどうやって帰ったのか、気付いたら家にいました。
とにかく会社へ連絡しなければと、子ども達に聞こえない部屋で電話をかけると、以外に冷静な上司、明日の釈放を一緒に警察署で迎えることとなりました。
いったい夫は何をやらかしたのだろう?
眠れぬ夜を過ごし、昼過ぎ、釈放されるであろう警察署へ向かいました。