○○屋敷へようこそ!

とある下町の小さな3階建てのマンションの1階部分が夫の実家で、母親と兄と夫の3人で暮らしているとの事でした。
夫に連れられ初めてその玄関の扉を開けると、そこには大家族を思わせるほどの大量の靴が玄関をところ狭しと埋め尽くしていました。
その靴を踏まないようにして中へ入ると、両サイドには新聞や雑誌が積み重ねられており、正面には何故かサリーちゃんちのような丸い頭の扉が二つ並んでいるのです。「さあ、あなたならどちらの扉を開けますか?」みたいに。(どちらを開けても出るところは同じなのですが)
物で塞がっていない左側の扉から入ると、奥の茶の間へ続く廊下(夫曰く、ダイニング)があり、何年も前に貰ったと思われるお歳暮などが積み上げられている他、床にはネコのトイレや日常使用されているトースターが置かれてました。
それらの荷物で窓がふさがれている為に、昼間にもかかわらず室内が真っ暗なのです。暗闇の中で何かを踏まないよう蹴らないようにして歩くのがやっとの状態で、まるで学園祭のお化け屋敷のようでした。
茶の間に入るとこれまたものすごい光景で、障子という障子は全て破れていて、縁側らしき廊下には段ボール箱や衣装ケースなどで天井まで埋め尽くされていました。
茶の間なのにベッドやタンス、仏壇などがあり、座るスペースはその都度自分で作るようになっていました。
長い間掃除されていないのか、床の間に飾ってある人形の髪はホコリが連なって足まで伸びていました。
他の部屋と同様、キッチンもどこで料理しているのかと思うほど物で溢れかえっており、ガス台の上には力の入った真っ黒焦げのやかんが一つありました。
食事の支度をしようと冷蔵庫を開けてみると、何年も熟成された得体の知れない物体で埋め尽くされていて、この中も真っ暗でした。
この先、この家の嫁としてどう対処したら良いのか、大量の物(ゴミ)と長年にわたりしみ込んだタバコの臭いとで目眩がしそうでした。