「早く殺しなよ・・・」 ~DV法って何?~

14回目の結婚記念日の夜、夫は駅前のスーパーで買ってきたであろう2・3本のカーネーションと「これからもヨロシク」と認めたメッセカードを私に手渡しました。
”なぜ『いつもありがとう』と書けないんだろう・・・”
そんな不満を抱きながらキッチンの出窓に飾った私。
浮気や逮捕で家族に迷惑を掛け、反省する良き夫を演じたつもりなのだろうが、その化けの皮は翌日あっけなく剥がれるのした。
休日の昼過ぎ、昼食を終えて片づけをしていた時でした。
今となっては思いだすことができない程、些細なことで原因はわかりません。
二言三言の会話からから突然駆け寄り、「ぶっ殺すぞー!」と叫びながら、私の傍にあった刃渡り30センチ程のノコギリ状のパンナイフを手に取り、首筋に直角に押し当ててきたのです。
その状態のまま睨み合いとなったその時、微かにナイフを持つ夫の手が震えていることに気付いた私はそっと囁きました。
「早く殺しなよ・・・」
「やめて」と言えば「やる」、「やれ」と言えば「やらない」夫。
予想通り、しばらくの間どうする事もできず固まっていたのですが、フッと”アホらしい”といった表情でその手を放しました。
その瞬間、私の中で怒りの反撃へと何かが爆発したのです。
”再び牢屋へぶち込んでやる!”
そんな気持ちからか、傍にあった固定電話の子機を手に110番しました。
「何やってるんだ!」
とっさにその子機を取り上げて通話を切る夫。
奪った子機を手放した瞬間に再度通報を試みるも夫が駆け寄り、もみ合いながら子機の奪い合いとなりました。
そうなると、身長177㎝の男にはとうてい勝てるものではなく、私の反撃は単なる無駄な抵抗として幕を閉じたのです。
当時、既にDV法が施行されていたものの、危機的状況にある当事者にとってはDV法って何?と言わざるを得ないものでした。
傍らにいた当時小学6年生の長女の目には、どんな光景が映ったのでしょう?
いつ殺されてもおかしくない状況下、それでも結婚した責任を果たさなければいけないのか、こんな光景を見続ける子供は本当に幸せなのか・・・。
世間の常識とかけ離れた現実で、本当の幸せってなんだろうと考え始めたのはまさにこの頃からでした。
その翌年、その答えが出る事件が起きたのです。