”ありがとう”

披露宴の出席者へのお見送りを済ませると、すぐに着替え二次会の会場へ向かいました。
既に大勢の友人達が集まっていましたが、その中には主賓である私の上司や叔父、夫の友人の中には人気マンガの主題歌を歌っている姉妹デュオ”D”がいました。
夫は学生時代アルバイトで遊園地などで行われる戦隊ショーにキャラクターとして出演していたそうで、当時のゴレンジャーやショッカーが全員集合していたのです。
ナルシストの夫はこの二次会の為にレンタルした衣装を着ての登場でしたが、時はバブル全盛期、当時流行った紫の地にゴールドの刺繍の入ったスーツはまるでこれから闘いに挑む闘牛士のようでした。
ここで司会を務めたのはピン芸人”O”でしたが、適度に盛り上がりながら滞りなく二次会は終了しました。
前日からの睡眠不足でクタクタになっていたのですが、夫の友人に誘われ3次会へと向かうことになりました。
既に眠くてもうろうとしていたのですが、何やら友人Tに「お前のせいで彼女からふられたじゃないか!」と夫が説教されていました。
友人の気が済んだのかようやく解放され、ホテルに帰ることができた時には、既に午前0時を過ぎていたのです。
気付いたら朝になり、チェックアウトを済ませて新居に帰宅すると、私の両親が帰り支度をして待っていました。
車まで両親を見送りに行った時、私は初めて両親に「ありがとう」と言うことができました。
それはこれまで育ててくれたことへの”ありがとう”でしたが、長年私を育てた両親には、私の言いたいことは全てわかっていたと思います。
「新婚旅行、気を付けて行ってこいよ」とだけ言い残し、両親は実家へ帰って行きました。