連帯保証人となった夫

夫は数年前に知人の紹介で知り合った不動産会社社長から、アパート経営をしないかという話を持ちかけられていました。
「株券を担保に融資を受け、ローンの返済は賃料収入から払えば良い、当社で賃料補償をする。つまり持ち出し無しでオーナーとなり、毎月家賃収入が得られる」などと甘い言葉に惑わされ、夫は勝手にアパートオーナーとして契約してしまったのです。
担保となる株券の殆どは私と私の両親のもので、これについても私に何の相談も無く勝手に持ち出したのです。
私も一度だけそのアパートを見に行ったことがあったのですが、都心から車で約2時間、なぜこんなところに?といった場所でした。
私は同行した社長という人物について信用できないと夫に言ったのですが、聞く耳を持たず契約を結んでしまったのです。
案の定、最初の数年は順調に賃料は入っていたようですが、ある日突然入金が無くなってしまったそうです。その頃から夫の様子がおかしいことに気付きました。
物影でこそこそと電話で「何とかして下さいよ、こっちも困ってるんですよー」と言ってみたり、その数日後には金融業者から自宅に「債務不履行の為、至急入金願います」などと電報が届いたり、さらに同じ業者から「ご主人が借金の保証人になっていることをご存知ですか?」などと電話が入ったりと、どうやら借金の取り立てであることがわかりました。
帰宅した夫に事情を聞いたところ、アパート経営の話を持ちかけた不動産会社の社長から倍にして返すうえに我社の経営者にするなどという条件で借金の連帯保証人になったというのです。
しかも買ったばかりのマイホームと車を担保にし、さらにアパートの賃貸料も全て債務履行として取り立てを受けていたというものでした。
200万円の保証人だと思ってサインしたら、実は5000万円の根保証がついていたことを知らなかったというのです。
目の前が真っ暗になりました。
夫は「すまん!」と言ってオイオイと泣くばかりでした。
そう言えば新婚当初、義父は経営していた会社が倒産した際に海外逃亡を図ったことから、夫も同じことをしかねないと思った私は、とにかくこの現状から逃げないことを約束させました。
当時の私にはそれしか出来ませんでしたが、今思えばその時点で夫が管理していた全ての財産を私が取り上げてしまえばよかったのかもしれません。
その後、その件の被害者は夫だけではなかったことから集団訴訟へと発展しました。
執拗な取り立てで私は体調を崩し救急車で運ばれたこともありましたが、約5年間の裁判の末にようやく解決しました。
しかし欲深き夫の野望は消えることはありませんでした。